「マイ・フレンド・フォーエバー」~戸川利郎
【1996年冬】
わが国でもHIV訴訟が新たな展開をして広く社会的な関心を集めるようになったが、エイズ感染者、患者の環境は実際のところ改善されたのだろうか。『マイ・フレンド・フォーエバー』(アミューズ)は、エイズに感染している11歳の少年と隣家の12歳の少年のひと夏の物語である。子供らしい純粋な友情が芽生えて、最初は迷惑に思っていた少年が特効薬かもしれない菓子をあげたり、2人が不良に襲われたとき、エイズの少年は「僕の血は毒なんだ」と肉体を武器にする。やがて2人は特効薬を求めて冒険の旅に出る。『依頼人』のブラッド・レンフロ、『ジュラシック・パーク』のジョゼフ・マゼロ、2人の少年俳優の共演、ピーター・ホルトン監督。
お年玉で見るのにふさわしい少年少女向きの作品をさらに紹介しよう。『フリー・ウィリー2』(タイムワーナー)は、孤児で里子となった少年がシャチのウィリーに出合って心を開いた第1作の続き。船の座礁事故で重油が流出、張りめぐらされた防油フェンスで入り江に閉じ込められたウィリー一家の危難を、今度は少年が救う。ウィリーを演じたシャチのケイコがこのほど水族館から海に戻されたのも明るいニュース。
『アンドレ/海から来た天使』(ポニーキャニオン)は、傷付いたアザラシを助けた漁師一家の末娘とアンドレと名付けられた芸達者なアザラシの交流を描く。『若草物語』(ソニー)は、これまでにも何度も映画化されている四姉妹の物語だが、このオーストラリア出身の女流監督ジリアン・アームストロングの新作は、スーザン・サランドンが演ずる母親にも焦点を当て、これまでの作品とはひと味違う。
日本映画では『耳をすませば』(徳間書店)がお勧め。読書好きの少女と少年の純愛を描く。宮崎駿脚本・絵コンテ、新人・近藤喜文監督。これは図書館の本の読者カードの名前が2人を結び付けるが、新人・岩井俊二監督の『Love Letter』(キングレコード)は同姓同名による誤解が招いた文通が過去の中学生同士の純愛を浮かび上がらせる。どちらもやや無理な設定ではあるが、すがすがしく見応えはある。
『学校の怪談』(東宝)は1995年夏の大ヒット作。第2弾がこの夏には登場の予定。コワい映画がお好きな方には『精神分析医J』(ポニーキャニオン)も。殺人を目撃した自閉症の少年を治療しながら、リチャード・ドレイファスの精神分析医が事件の真相に挑む。『ドライビング・ミス・デイジー』のブルース・ベレスフォード監督の新作だが、劇場未公開。
戸川利郎